労働時間の把握の必要性

労働時間を自己申告制に頼る事によって起こる、賃金の未払いや長時間労働といった問題が生じてしまいます。トラブル防止するためにも適切な時間管理を行いましょう。
労働基準法の適用範囲
対象事業場
対象となる事業場は
労働基準法のうち労働時間の規定が適用される全ての事業場です。
対象労働者
対象となる労働者は、
管理・監督者とみなし労働時間が適用される労働者を除く全ての労働者
管理・監督者とは
役職名に関わらず、一般的には部長、工場長など労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。
みなし労働時間とは
- 事業場外労働者で、労働時間の算定が困難な者
- 専門業務型労働制が適用される者
- 企画業務型裁量労働制が適用される者
をいいます。
労働時間の規定が適用されない労働者について
労働時間の規定が適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があるので、過重労働を行わせないようにするように適正な労働時間管理を行う必要があります。
労働時間を適切に把握するために必要な措置
始業・終業時刻の確認・記録
使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの、始業・就業時刻を確認し記録すること。

労働時間の把握をするためには、1日何時間働いたか、だけでなく、労働日ごとに始業・終業の時刻を使用者が確認記録し、これを基に全体で何時間働いたかを把握・確認する必要があります。
始業・終業時刻の確認方法
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する原則的な方法は以下の通りです。
- 使用者が、自ら現認する事により確認し、記録すること、
- タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。
自ら現認するとは
使用者自らあるいは労働時間管理を行う者が、直接、始業時刻や終業時刻を確認することです。
なお、確認した始業時刻と終業時刻については、その労働者からも確認することが望ましいとされています。
タイムカード・ICカードの確認
タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基本情報とし必要に応じて、残業命令者等とこれに準ずる報告書があれば、それらの記録も合わせて確認します。
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自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置
自己申告制により行わざるを得ない場合以下の措置が必要です。
- 1.自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。
- 2.自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。
- 3.労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。
また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

自己申告による労働時間の把握については、あいまいな労働時間管理となり がちであるため、やむを得ず、自己申告制により始業時刻や終業時刻を把握す る場合に講ずべき措置を明らかにしたものです
不利益取扱の禁止
自己申告の具体的な内容・適正な自己申告を行なった事による不利益な取扱が行われないこと
実態調査に実施
使用者は自己申告制により労働時間が適正に把握されているか否かについて定期的に実態調査を行い、確認することが望ましいとされています。
労働時間の適正な申告を阻害する措置
割増賃金の予算枠や時間外労働の目安時間が設定されている場合で、その時間を超える時間外労働を行った際に賞与を減額するなど不利益な取扱いをしているものがあります。
労働時間の記録に関する書類の保存
労働時間の記録に関する書類について、3年間保存すること

具体的には、使用者が記録した始業・終業の時刻を記録したもの、タイムカード記録、残業命令書、報告書、労働者が記録した報告書などが該当します。
起算日
書類ごとに最後に記載がされた日
賃金台帳の記載の記載事項
- 労働日数
- 労働時間数
- 残業時間数
- 休日労働時間数
- 深夜労働時間数

賃金台帳にも労働時間の記録を記載します。
労働時間を管理するものの職務
事業場の労務管理を行う部署の責任者は、その事業場内の労働時間の適正な把握等労働時間管理を適正化を図って、その事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握と解消を図ること。

労務担当役員、労務部長、総務部長等労務管理を行う部署の責任者は、労働時間が適正に把握されているか、過重な長時間労働が行われていないか、労働時間管理上の問題点があればどのような措置を講ずべきなのかなどをk検討すべきであることを明らかにしたものです。
労働時間設定委員会等の活用
事業場の労働時間管理の状況を踏まえて、必要に応じて時間管理などの設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握し、労働時間管理上の問題点と解決策などの検討を行うこと
労働時間等設定委員会等の活用する措置が必要になるケース
(1)自己申告制で労働時間の管理が行われている場合。
(2)一つの事業場で複数の労働時間制度の採用しており、これに対応する労働時間の把握方法がそれぞれ定められている場合。

労働時間等設定改善委員会、安全・衛生委員会などの労使協議組織がない場合には、新たに労使協議組織を設けることを検討すべきとされています。
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