手間時間とは
使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保証されない状態で待機する時間は、手待ち時間として労働時間とみなされます。

労働時間とみなされた場合は割増賃金が必要です。
手待ち時間の特例
労働密度がまばらであり、労働時間規制を適用しなくてもお必ずしも労働者保護に欠けることがない一定の断続的労働に従事するものについて、労働基準法上、労働基準監督署長の許可を受けて労働時間規制を適用除外になります。

これは通常の労働者と比較して、労働密度が薄く、労働時間、休憩、休日の規定を適用しなくても必ずしも労働者の保護に欠けることがないので、労働時間の規制が適用除外となっています。

緊急の対応を行なった場合は、原則通りの労働時間になります。
宿直又は日直の断続的な業務
所定労働時間又は、休日に勤務した場合、労働者本来の業務ではなく、巡回業務、郵便物やFAX・電話を受ける非常事態に備えて待機するもので、通常は、ほとんど労働する必要がない勤務を許可の対象としています。

医師について医療法(昭和23年法律第205号)第16条の規定により「医業を行う病院の管理者は、病院に医師を宿直させなければならない」とされています。
宿直は一般的に外来診療を行なっていない時間帯に、医師等が入院患者の病状の急変に対処するため医療機関内に拘束され待機している状態をいい、このような待機時間も一般的には労働基準法の労働時間になります。

医師・看護師の宿日直は医療法で義務付けられているものなので、医師・看護師の本来の業務であっても特定の軽易な業務(定期巡回、定期検温脈)については、宿日直勤務中に処理しても差し替えないとされています。
改正後(令和元年7月1日付け基発0107第8号宿「医師、看護師日直の許可基準について」)
(2)宿日直に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊の措置を必要としない軽度を必要としない軽度の又は短時間の業務に限ること。例えば、次に掲げる業務などをいい、下記2に掲げるような通常の勤務時間と同態様業務は含まれないこと。
- 医師が、少数の要注意患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等(軽度の処置を含む。以下同じ。)や、 看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 医師が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜間 (例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外来 患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診 等による診察等や、看護師等に対する指示、確認を行うこと
- 看護職員が、外来患者の来院が通常想定されない休日・夜 間(例えば非輪番日であるなど)において、少数の軽症の外 来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問 診等を行うことや、医師に対する報告を行うこと
- 看護職員が、病室の定時巡回、患者の状態の変動の医師へ の報告、少数の要注意患者の定時検脈、検温を行うこと
3 宿日直の許可は、一つの病院、診療所等において、所属診 療科、職種、時間帯、業務の種類等を限って与えることがで きるものであること。例えば、医師以外のみ、医師について 深夜の時間帯のみといった許可のほか、上記1(2)の例示に関 して、外来患者の対応業務については許可基準に該当しない が、病棟宿日直業務については許可基準に該当するような場 合については、病棟宿日直業務のみに限定して許可を与える ことも可能であること。
4 小規模の病院、診療所等においては、医師等が、そこに住み込んでいる場合があるが、この場合にはこれを宿日直とし て取り扱う必要はないこと。
など。
従前の許可基準と内容が変わるものではなく、基準を明確化したものです。
病院の事務職員には適用されません。
医師の研鑽(知識技能習得のための学習時間)に係る労働時間について

一般的な労働者の研修・教育訓練の時間の取り扱い
参加することが業務上義務付けらている研修・教育訓練の受講や使用者の指示により業務に必要な学習を行なっていた時間は労働時間に当たります。
医師の研鑽の場合
医師の研鑽については
医師の研鑽とは
医師が診療その本来の業務の傍ら、医師自らの知識の習得や技能の向上を図るために行う学習、研究など。
医師の研鑽に係る労働時間の考え方について
1.所定労働時間の研鑽の取り扱い
- 所定労働時間内において、医師が、使用者に指示された勤務場所(院内等)において研鑽を行う場 合については、当該研鑽に係る時間は、当然に労働時間となる。
2.所定労働時間外の研鑽の取り扱い
所定労働時間外に行う医師の研鑽は、診療等本来の業務と直接の関連性がなく、かつ上司の明示・黙示の指示によらずに行われる限り、在院して行う場合でも、一般的に労働時間に該当しません。
他方、当該研鑽が、上司の明示・黙示の指示により行われるものである場合には、これが所定労働 時間外に行われるものであっても、又は診療等の本来業務との直接の関連性なく行われるものであっ ても、一般的に労働時間に該当するものである 。
所定労働時間外において医師が行う研鑽については、在院して行われるものであっても、上司の明 示・黙示の指示によらずに自発的に行われるものも少なくないと考えられる。このため、その労働時 間該当性の判断が、当該研鑽の実態に応じて適切に行われるよう、また、医療機関等における医師の 労働時間管理の実務に資する観点から、研鑽の類型ごとに、その判断の基本的考え方を示が示されました。
研鑽の累計①:一般診療における新たな知識、技能の習得のための学習
研鑽の具体的内容:
例えば診療ガイドラインについての勉強、新しい治療や新薬についての勉強、自らが術者などである手術や処置等についての予習や振り返り、シュミレーターを用いたて技の練習などが考えられます。
研鑽の労働時間の該当性:
研鑽の類型②:博士の学位を取得するための研究及び論文作成や、専門医を取得するための症例研究や論文作成

見学しているだけなら、労働時間にはなりませんが、診療を行なった場合は、労働時間になります。また、見学中に診療を行うことが常態化している場合は、全てが労働時間になります。

(1)医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための手続 (ルール作り)
医師の研鑽については、業務との関連性、制裁等の不利益の有無、上司の指示の範囲を明確化する 手続を講ずること。例えば、医師が労働に該当しない研鑽を行う場合には、医師自らがその旨を上司 に申し出ることとし、その申出を受けた上司は、それら申出をした医師との間で、その申出のあった研鑽に関して、
- 本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理のいずれにも該当しないこと
- その研鑽を行わないことについて制裁等の不利益はないこと
- 上司としてその研鑽を行うよう指示しておらず、かつ、研鑽を開始する時点において本来業務及び本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、本人はそれらの業務から離れてよいことについて確認を行うことが考えられます。
- 上司は、業務との関連性を判断するに当たって、初期研修医、後期研修医、それ以降の医師といった職階の違い等の当該医師の経験、担当する外来業務や入院患者等に係る診療の状況、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえ、現在の業務上必須かどうかを対象医師ごとに個別に判断するもの。
- 手続は、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽の内容について月間の研鑽 計画をあらかじめ作成し、上司の承認を得ておき、日々の管理は通常の残業申請と一体的に、 その計画に基づいた研鑽を行うために在院する旨を申請する形で行うことも考えられます。
- 手続は、労働に該当しない研鑽を行おうとする医師が、当該研鑽のために在院する旨の申し 出を、一旦事務職が担当者として受け入れて、上司の確認を得ることとすることも考えられます。
(2)医師の研鑽の労働時間該当性を明確化するための環境の整備
上記(1)の手続について、その適切な運用を確保するため、次の措置を講ずることが望ましいとされています。
- 労働に該当しない研鑽を行うために在院する医師については、権利として労働から離れる ことを保障されている必要があるところ、診療体制には含めず、突発的な必要性が生じた場合を除き、診療等の通常業務への従事を指示しないことが求められる。また、労働に該当し ない研鑽を行う場合の取扱いとしては、院内に勤務場所とは別に、労働に該当しない研鑽を 行う場所を設けること、労働に該当しない研鑽を行う場合には、白衣を着用せずに行うこと とすること等により、通常勤務ではないことが外形的に明確に見分けられる措置を講ずるこ とが考えられること。手術・処置の見学等であって、研鑚の性質上、場所や服装が限定され るためにこのような対応が困難な場合は、当該研鑚を行う医師が診療体制に含まれていない ことについて明確化しておくこと。(服装で研修していているかどうかが、明確になるようにすること)
- 医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、労働に該当しない研鑽を行うために所定労働時間 外に在院する場合の手続、労働に該当しない研鑽を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示すこと。(医師が研修をしているのかが他の職員にもわかるように書面で明確化し、周知すること)
- 上記❷で書面等に示したことを院内職員に周知すること。周知に際しては、研鑽を行う医 師の上司のみではなく、所定労働時間外に研鑽を行うことが考えられる医師本人に対しても その内容を周知し、必要な手続の履行を確保すること。また、診療体制に含めない取扱いを 担保するため、医師のみではなく、その医療機関における他の職種も含めて、それらの取扱い等 を周知すること。
- 上記(1)の手続をとった場合には、医師本人からの申出への確認や当該医師への指示の記録 を保存すること。なお、記録の保存期間については、労働基準法(昭和22年法律第49号)第 109条において労働関係に関する重要書類を3年間保存することとされていることも参考と して定めること。
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